人生の充実に向けた就労環境の法改正
こんにちは、社会保険労務士の澤瀬です。
今春、2024年問題として知られるとおり、運送業、建設業、医師の時間外労働時間の上限規制が施行となりました。他業種は2019年4月大企業に、翌年2020年中小企業に施行されており、5年目の2024年に適用除外となっていた前述の業種についても一部条件を緩和し、または段階的見直しをしつつ施行されたものです。
そして、これからも就労環境の多様性への対応に向けて法改正が続きます。前回の中村講師のメルマガにあったジェンダーの問題もしかり、夫婦共働きの世帯が片働きの世帯を上回る時代となり、誰でもがその人生を充実させることができるための環境整備のための改正です。
雇用保険法改正が本年5月に交付され、順次施行となることが決まっています。
主な改正としては、2025年4月から自己都合退職における基本手当の給付制限が2か月から1か月に短縮され、自ら教育訓練を行った場合は給付制限が解除されることとなります。今年10月の教育訓練給付の10%拡充も相まって、雇用の流動化と適正な労働移動を後押しすることになるでしょう。
また、令和10年10月からは、労働時間が週10時間以上20時間未満の就労者の方(現行は20時間以上)も雇用保険が適用される予定です。
本年10月から週20時間以上の就労者を社会保険強制加入とする企業の範囲が100人超から50人超の企業へと拡大されますが、将来的には企業規模に関係なく強制加入とすることが検討されています。
本年11月1日にフリーランス法が施行になることを考えると、フリーランス、週10時間以上で雇用保険加入、週20時間以上で社会保険加入、またはその組み合わせという多様な働き方を自ら選んでいくことができる就労環境が整えられることになるでしょう。
ワークライフバランスについても来年4月から続々変わります。
「残業免除の申請」が3歳から未就学児に、「子の看護休暇」も未就学児から小学3年生まで延長され、学校行事参加等多目的に利用できる「子の看護等休暇」に変わります。
育児休業給付金も、14日以上の産後パパ育休を取得で、夫婦ともに最大28日間、賃金の13%の上乗せ給付が受けられることとなり、本体給付金と合わせ8割の収入(手取り10割)をカバーできることとなります。また、2歳未満の子を養育する育児短時間勤務者についても育児短時間就業給付(賃金の10%)が新設され、収入面でのサポートも充実されます。
様々な法改正が五月雨式に施行されるので分かり難く感じるかもしれませんが、多様性社会に適用できる就労環境の整備という視点で見ると納得できるのではないかと思います。
さてさて、法整備はともかく、社会全体の思考も皆さんで考えてより充実した人生を送れるようにしたいですね。「昔はこんな制度がなくて子育てはこんなに大変だった。あななたちは恵まれている。」というような昭和の化石発言は自制したいと思います。