人生100年時代の「リタイア後のお金の話」vol.46 大久保名美

ファイナンシャル・プランナー/ キャリアコンサルタント
大久保名美

1、はじめに:人生100年時代のお金について

 人生100年時代到来と言われて久しくなりました。
2019年の日本人の平均寿命は、女性が87.45歳、男性が81.41歳でした。これは単純に計算すると、会社などにお勤めの方が定年退職を迎えリタイアした後も、20年以上生存期間があるということになります。
 
 今回は、誰もがいつかは迎える「リタイア後」のお金について、つまり老後資金について考えてみたいと思います。あらかじめ準備するのか、生涯現役で働くのかなど方法は千差万別、人それぞれであるという結論です。

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2、老後資金2,000万円は誰もが必須なのではない

 少し前に「老後資金2,000万円問題」が話題になりました。これは、金融庁が2019年6月3日に公表した金融審議会の市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」の内容が世間的に大きく取り上げられ話題になったことで、皆様もご記憶に新しいかと思います。

 この内容、報告書を読んでみるとこういうことでした。
''''「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では、毎月の生活費等の支出の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1,300万円~2,000万円になる」という内容でした。

 直近の数字で確認してみましょう。

 消費支出関係の調査によると、2019年の高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の毎月赤字額(実収入-実支出)の平均値は、約3.3万円/月となっています。

 一方、平均寿命は、2019年のデータで、女性が87.45歳、男性が81.41歳となり、ともに過去最高を更新しています。(注:平均寿命は、今後死亡状況が変化しないと仮定し、その年に生まれた0歳児が平均で何歳まで生きられるかを予測した数値です。)

 以上のことから、「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯」において、平均寿命と同程度存命でお暮らしになると仮定した場合の、今後の生活費等の不足額は次のように計算されます。

 「毎月の不足額3.3万円」×「12ヶ月」×「20年〜30年」=「792万円〜1,188万円」

 この計算だと総額は800万円から1,200万円となりました。金額だけみると、例の「2,000万円」とは結構開きがあることがわかります。これは、前提となる基礎の不足額が変化すると、全体の必要額が大きく変化するというだけのことではあります。

3、老後資金の準備方法はいろいろある

 では、リタイア後の長い期間を経済的に安心して暮らすための「老後資金」はどうやって準備すればいいのでしょうか?実際の高齢者世帯の家計調査を見てみると、生活費の不足額の補填には、それまでの貯蓄額や退職金などを取り崩して生活しているという状況も見えてきます。

 まずは、国民年金、厚生年金など公的年金が高齢期の家計の大きな柱であることは間違いありません。さらには、それぞれの退職金や貯蓄の他に、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)など国が提供している制度の利用や、民間の保険会社の年金保険などで準備することも必要かもしれません。

 皆様も、何がふさわしいのかそれぞれの制度や金融商品などを検討されたことがあると思います。それぞれに特徴があり、メリット、デメリットがあります。またリスクもあります。

 いずれにしろ、現役時代から高齢期を見据えて計画的に資金の準備を行うことが肝心です。一口に必要な老後資金と言っても、貯蓄額や夫婦の年齢差、そして公的年金の受給額など、それぞれの家庭によって状況は大きく異なっています。
 
 老後資金の準備のために、まずは「制度ありき」、商品ありきではなく、ご自身の現状を確認することから始めてみましょう。その上で、早めの準備を心がけたいものです。

4、できるだけリタイアしないという選択肢もある

 さて、そもそも「老後資金2,000万円問題」の議論は、「退職後は働かない」というライフスタイルを前提としたものでした。しかし高齢期でも働き続けている人は多くなってきています。

 実際にどのくらいの人が高齢期でも働いているのかを見てみましょう。

 総務省統計局によると、2018年の高齢者の就業率(65歳以上人口に占める就業者の割合)は、
男性が33.2%、女性が17.4%と、いずれも7年連続で前年に比べ上昇しています。特にも、65~69歳の就業率をみると、2018年では男性で57.2%、女性で36.6%と一貫して上昇しています。

 この数字を見ても、定年退職後以降もリタイアせず、何らかの形で働き続けているシニア層が現在も一定数あり、今後も増えていくと考えられます。高齢期の経済的基盤の大きな柱が、年金や退職金などの貯蓄だけでなく、就労による賃金や報酬となっていくことが予想されます。

 定年退職以降も働き続けるという選択肢も選べるのです。

5、お金だけでなく、いきがいと健康、そしてつながりも大切

 近年シニア層の就業率が高くなってきていることは、先に取り上げた総務省統計局の調査を見ても明らかな傾向ですが、働くシニア層の「就業する理由」は「お金」だけではないようです。

 少し前のデータになりますが、平成24年の厚生労働省の調査によると、「就業する理由」は、男性の60~64歳層で「経済上の理由」が最も高くなっていました。一方、長期的推移をみると、「いきがい・社会参加」が上昇傾向にありました。

 さらに、65~69歳層では、「経済上の理由」の割合が小さくくなり、「いきがい・社会参加」や「頼まれた」といった社会とのつながりによる理由が高くなっていました。

 一方、女性については、いずれの年齢層も「経済上の理由」が最も高くなっていますが、男性よりその割合は小さく、「いきがい・社会参加」や「健康上の理由」が高い傾向にあります。(平成24年版:労働経済の分析より)

 この調査から、シニア層の働く理由の第一が「経済的理由」であることは間違いありませんが、それだけではない理由も見えてきます。「いきがい・社会参加」や「頼まれた」という社会的つながりも重要であり、できれば、65歳以降も働き続けたいと考えているという傾向が見られます。さらに、「働くのは健康に良い」という理由を挙げる人も多いようです。

 また別の調査では、高齢期の希望する働き方(就労形態)は、「フルタイム」よりも「パートタイムや時短」など、自分自身のライフスタイルや健康状態に合わせて、無理なく働くことを望んでいるという結果もあります。

 働くシニア層が重視しているのは「お金」だけでなく、「いきがい」や「健康」そして「つながり」も重視ししつつ、高齢期のライフスタイルに合わせた就労だということです。

6、まとめ:選択するのはあなた自身

 ここまで、誰もがいつかは迎えるリタイア後の「老後資金」について考えてきました。老後資金の準備には、公的年金や退職金、そして貯蓄や非課税制度の利用などいろいろな方法があることをご紹介しました。

 さらには働き続けるのも選択肢の一つであることをご紹介しました。生涯現役で働き続けているシニア層の多くは、お金だけではなく健康やつながり、そして生きがいを得るために働き続けています。

 今後さらなる少子高齢化の進展などにより現役世代の一層の減少が予想され、国は公的年金制度の変更や企業への定年延長義務化などを予定してします。ある意味、生涯現役を広く浸透させようという国のプレッシャーを感じずにはいられません。

 しかし、長い高齢期をどう過ごすのか、その生活資金をどう考えるのかは人それぞれです。選択するのは私たち一人一人、そして自分の人生を生きるのは、自分一人だけです。

 選択肢は、あなた自身にあるのです。
 

  • 大久保名美
    ファイナンシャル・プランナー/ キャリアコンサルタント
    合同会社福々舎 代表
    HP : https://hukubukusya.jp/
    e-mail:hukubukusya@gmail.com

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